アメリカから帰り数年ぶりに会って突然、
「俺肝臓ガンかもしれんくて。それで、転職して福島に行くんだわ」と言われてパニックを起こしたわたしを、早速介抱せねばいけない山下はいつ会っても山下であった。
泣き崩れて空港のショッピングモールで立ち尽くしたわたしは、身体に力が入らずに歩けなくなってしまった。
座り込んで泣きながら混乱の最中にいるわたしに、自販機でお茶を買ってくるように命じた。
話す予定だったことは山ほどあった。
新しく買う車の車種や、支援のこと、タオ君の成長や増えていた白髪をどうするかまで、やっともう一度近くで家族のような安心を持てるのだと思いながら空港まで遥々山下を迎えにきたわたしは、天井からタライを落とされて、いつものとおりドリフ劇場の中で悶えたのだった。
山下はわたしをパニックにさせることが昔から得意だったので、そのあたりは心得ている。誰よりも的確に私がパニックにならないようにサポートできる部分と、誰よりも的確に私がパニックになるように突き落とす部分の最も端と端を持ち合わせている男である。
アメトムチどころの騒ぎではなくなった私を、持て余した山下は、買い与えたペットボトルのお茶の蓋も開けられない女に気づき、「ああ、コイツは普通の女じゃなかった。マイだったことを忘れていた」と思い出した風に、さっとペットボトルを取り上げてぎゅっと蓋を力強くひねった。
蓋の開く、小さくメリメリッという音は、それを確認させたようだった。
家に来て話をする予定だったのが、全ての段取りが総崩れになったわたしはそこから動けなくなり、お店のどこかに入ろうと立ち上がると、歩けなくなってしまった。
元々わたしは、人と一緒にショッピングモールなどを歩けない。歩きながら、目的地に向かう間に、同時に一緒にいる人を認識することができないのだ。
昔一度その話を聞いた山下と、手を繋ぐ練習をしたことがある。近所に散歩に出る時に、手を繋いでほしいと伝えた私に、戸惑うように


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