山下

期待

07/14/2024

そういえば、昨日山下が、山下の言葉を借りると(傷口に塩を塗られて)、自分大嫌いモードの発言をしていた。

「俺にあんま期待しないほうがいいとおもう」と書いてあって、言葉づらよりもエネルギーを拾うわたしは、

その鋭い不安と怒りに、グサってえぐられた気持ちになったんだけど、わたしは特に期待してるとかいうわけじゃないんだよなあ、と考えていた。

高次が、「りゅうじは気づくよ」と言っているので、気づくんだろうな、と思っているだけで、気づいてほしいとか変わってほしいとかは、全然無いと思う。

むしろ逆で、ただ「何かを無理してやろうとしなくても、ただ居てくれるだけで十分なのだ」ということが伝えたくて、ずっと長年伝わらなくて、りゅうじは、わたしがとてつもなく高望みをしているのだと誤解する。

 

期待、かあ。と色々思い返していて、過去の結婚の失敗やわたしとの何度も繰り返した別れについて、いつも「覚えてない」としか言わない山下の中で、記憶は山ほど改ざんされており、

「え!?なにその情報どっから」と思うようなことを言い出すこともある。

 

その点、日々日常をすべてそっくり忘れてしまう私の特性上、10年前のことを鮮明に事細かに正確に覚えていたりするようなところがあったり、まあ当時の記録が残っているものだから、山下は本当に素敵で愛のある男なのに、いまだに自分を否定するんだな、と思った。

 

一緒に暮らすにあたり不安点を話しだすと、突然シャッターが降りたように冷たい言葉を吐き出す。

優しくて、「福島に来られるか?」と穏やかな包み込むように私に声をかける山下とは、別人で、彼の中には、発達障害のマイを守りたい心からの深い愛情と、男を傷つける女への怒りと拒絶の両方が存在しており、後者が発動するときは私は必ずパニックを起こした。

 

「期待すんな」と自己防衛で笑うのではなく、その言葉には「俺はどうせダメな男だから失敗するから何もできない」という真面目な意味が込められており、シャッターが降りると、わたしも近づいていけないコマンドが入ってしまい、関係が途絶えることを繰り返した。

 

自分の場合、鋭く相手を攻撃するとき、わたしは常に身の危険を感じて不安でいっぱいで、目の前にいる相手に助けを求めている。

山下がどうなのかは知らないが、傷つく不安がたくさん出るときに、そうなる傾向があるような気がした。

自分が、本当の恐怖を繰り返し味わって苦しんだあと、ようやく山下の気持ちを理解することができた。

 

自分がそういう孤独に陥るとき、どう接してもらうと一番嬉しいか。

わたしの場合は、傷ついたりせずに、困っているんだと気づいてもらうことが嬉しかった。

山下はそっとしておいてほしいだけで、違うかもしれない。

 

この10年を振り返って、期待すんなと言う山下は、むしろことごとく期待を裏切ってきた男だったな、と思った。

そもそも一番最初の出会いの時に、天使からピーと線を引かれた男であり、(この男はナシナシという意)その後何度会っても、一度も「こいつには少し期待できるかも」と一切思わせない、むしろすごい。

魅力ゼロの男を演じ続けた山下。

 

彼はそんなわたしの「こいつには何も期待できん」という期待をよそに、繰り返し、繰り返し連絡をくれ、助けてくれ、愛情を注いでくれて、何度失敗してもトライしてくれた。

それだけでもう十分すぎじゃね?

とわたしは思っており、山下はきっとまだ、「好きな女を幸せにできない自分」の呪縛の中にいる。

 

自分のゴールは、山下をその呪縛から解き放つことであり、それはつまり、わたしが彼の腕の中で真の幸せを感じることを意味する。

 

 

こんなに素敵なのにもったいないな。と思うことも一種の期待だ。

こいつには期待できない。と思うことも、ある意味期待である。

 

山下への期待を一切合切手放して、ただすべてを受け入れる練習をしている。

 

そしていつかもし、彼が、おれは十分このままでマイを幸せにしてたんだと気づく日がきたら、わたしたちのストーリーは無事に完結すると思う。

 

 

 

 

 

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