朝ごはんの部屋には、ビジネスホテルっぽいおじさんたちとかがたくさんいて、普段泊まる旅行者用のホテルとは全然雰囲気が違った。
タオ君が、ママこれは旅行じゃなくて引っ越しの下見だからねと言って予約してくれたホテルに、中高生くらいのスポーツの学生の団体がいて、あっという間にきっとタオ君も、こんなふうに合宿とかに行くようになるんだと思った。
よく人々を見ていると胸にバレーボールと書かれた服で、隣にいる団体の人に声をかけると 今山梨の小瀬体育館では中学の関東大会が行われているらしい。
これまでどんな活動をやっていても、自分がその地域に属していない感覚で、それ以上掘り下げたりそれ以上深く入ってゆくことができなかった。
もしも此処に自分の居場所ができてしまったらもう2度と潤のところには行けないと
どこかきっとそう感じていた。
でもこれからは違う。
地域のバレーボールのコミュニティでも小学校でも、こんなふうに次々と人と話して、思う存分に知り合っていっていいんだと思ったら、心からワクワクする気持ちが湧いてくる。
居場所をこれから自分はこの場所に、作ってゆくんだ。
潤にとっても山梨はこれまでずっと、お客さんのような印象があって、たとえ終身雇用でも、いつも常に上を向き続けている潤にとっては、通過点でしかないのかもしれないと感じていた。
だからこそ、そこにまいを呼ぶことをいつも躊躇していて、いつも行き先のことを考えて話していた。
でもこの春から昇進したと話した潤は、山梨を拠点にしたとしてもきっといろんな場所にこれから活躍をしてゆける。
その自信や積み重ねが、きっと彼にも山梨に居場所を作ったんだ。
どれだけの孤独をくぐり抜けてふたり、それぞれがんばってきたんだと思うと涙が出てくる。
昨日は、いろんな肩書を並べられても全然すごいとも思わなかったけど、今度はちゃんと
よくがんばったねと
すごいねという気持ちをちゃんと込めて話せたらいいな。
わたしたちは、お互いに向かっているわけでもなければ、仕事の成功に向かっているわけでもない。
ただ自分という人間が生きることに
必死に向き合っていった結果
それが最後同じ場所にもし
重なるのだとしたら
それほど幸せなことはない。
昔から仕事でいつも認められていた潤のことを、疑ったことも信頼しなかったことも一度も無いけど、改めてコツコツキャリアを積んできた男性の重みや、それが世界を必ず救っていることに心から尊敬したいとそう思う。
わたしはわたしをがんばって、ずっとずっとやりたかった、愛する家族を支えるということを、この場所で始めていきたい。
バレーボールのチームのマネージャー、いいな。
ママさんバレーで活躍することはまず無理でも
潤やタオ君がバレーをする横で、側にいられたらそんなに幸せなことは無いんだ。
山梨はそっか関東に属するんだよね。
東京や関東のクライアントさんがダントツで多かったわたしにとって、この先自分の仕事を改めてやっていくにしても、うんと動きやすくなるんだ。
嬉しい。
無事に引っ越しの話が進みますように。
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